『Mother』

一階の受付で面会の申し込みを済ませ二階へ上がったら隣に椅子が用意されている　こんにちはと無言の会釈をすると他人行儀な愛想笑いが返ってきた　誰に向けてかお祈りを始めた



今日もなんの反応もない　しかたない　今日もそばで座ってるだけ

座って　スマホをいじって　ちらちらと母親の顔を見て　ずーっと頭の中を長渕剛の『Mother』が流れていた

♪　　どれほどひとを愛しても愛しぬいたとしても
♪　　母親のからだに戻ることはできない　　　　　　♪

おかーちゃんのからだを触りたくなった　周りに誰もいなかったらきっとおかーちゃんに抱きついていた

やがて　そろそろ・・・

家まで車で３０分ほど　なんか悲しくて　もう悲しいばかりで　こんな気持ちになるのはわかっているから　せやから来たくないんやと思い　でもやっぱりときどき顔がみたくなり　カーステの長渕剛の『Mother』をリピートにしてまるで自分に罰を与えるみたいに家へ帰るまで聴き続けた

温度計は３６度　地震に水害に　テレビも新聞もあっち観てもこっち読んでも辛い悲しい夏　いつか松山千春が言ってた　金のあるやつは金を出せ　力のあるやつは力を出せ　何も出せないやつは元気出せ

ほんまやな　さ　私も元気出そ　そばか寿司か
なんか美味しいもん食べて帰ろ

ときどき観たくなるユーチューブのめちゃ長いビデオ　このころの長渕は好きだった　７分あたりまではぜひ聴いてほしいです

『Mother』






おかーちゃん
なんや
なんもなーい

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